令和の幸福論

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アランの幸福論 #14 悲劇

タイタニック号で救われた人たちの心には、ぞっとするような思い出が残っている。

その思い出は恐怖の瞬間であるし、僕がイメージする中でも同じく恐怖の瞬間である。

この場合、その人の思い出も、僕のイメージも、その悲劇を味わっている見物人である。

しかし、悲劇の進行そのものの中には、こんな見物人は存在しない。

予期されない知覚、意味の分からない知覚があるだけだ。

 

感じることは振り返って考えてみることであり、思い出すことである。

たとえば、病人を死ぬまでみとった時、深い悲しみに囚われるのも同じことである。

その時はただぼうっとしていて、瞬間瞬間の知覚や行動にすっかり心が奪われているだけである。