想像力という奴は死刑執行人よりもたちが悪い。
例えば、自動車にひかれた人が即死したとする。
その人の人生は終わったのだ。
その人は、自動車にひかれる前は苦痛を感じていなかった。
即死した後も苦痛を感じていない。
だが、その事故を見たぼくは、あれこれ考える。
その想像による苦痛は、あくまで想像上のものである。
今、自分に起こっていることに苦しむ限り、そんなに苦痛は多くない。
起こるかどうか分からないことを想像したり、すでに終わったことを思い出したり、想像上の苦痛の方がはるかに多い。
そんなことをしていると、一生を台無しにしかねない。